古川利明の同時代ウォッチング |
さて、いよいよ、昨日(6月24日)、永田町では今年最大のイベントともいえる夏祭(=参院選)の火蓋が切って落とされました。公示の昨日は、首都圏は夏到来を思わせる厳しい暑さになりましたが、今日は打って変わって、時折、激しい雨を叩きつける、梅雨らしい天気です。
「衆院のカーボンコピー」とも言われている参院は、選挙区が小さく、かつ、何時、解散があるかわからないために、うるさい(しつこい)くらいに候補者が日頃からドブ板をやっている衆院と違って、一般に有権者(主権者)の関心は小さくなりがちです。
しかし、政局的、いや、この国の政治の流れを根本から変える「大政変」のきっかけは、常に参院選の結果から始まっているのです。
記憶に新しいところで言えば、橋本内閣退陣の引き金になったのは、前々回の98年7月の参院選敗北です。
当初の大新聞の世論調査等では「自民優勢」が伝えられていましたが、実際にフタを開けてみたら、投票率が59%(正確には58・84%)に達し、自民党は当初の予測を大幅に下回る45議席しか取れず、「参院過半数割れ」に追い込まれました。
で、議会制民主主義において、与党第1党が過半数を制することができないということは、わかりやすく言い換えれば、“群雄割拠”の戦国状態ということです。
こうした状況を昨晩、筑紫哲也のニュース23に出ていた矢野絢也が、「生きた三国志」を身を持って実践しておられる池田大センセイの胸の内を明かすように、次のようにうまいこと解説していました。
「参院で過半数割れでも、衆院で過半数を制していれば、確かに予算は通ります。しかし、予算以外の他の法案が通らなければ、予算は執行できないわけですから」
これは、見た目には盲腸のようにしか見えない「参院」が、実はいかに「政局的」には大重要であるかを見事に説明しています。
まさにこの矢野絢也の発言は、国怪における権力の行使において、参院で過半数を制することに意味が、いかに重要かということです。もっと言ってしまえば、大センセイ
お得意の「キャスティング・ボート戦術」の根幹は、「参院における第1党の過半数割れ」にあると言っても過言ではありません。
小沢自由党という“クッション”を経て、自・公がくっついて、本サイトにアクセスしている超ヒマな皆さんはよく知ってるように、例の「99年体制」によって、池田大センセイが自民党を焚きつけて(んで、“御本尊サマ”はウラでこっそり隠れて)、大暴走を始めるのは、じつは、この「98年夏の参院選自民党大惨敗」がすべての出発点なのです。
いまの自・公路線、また、その前の新進党戦略の出発点も、じつは、89年夏の参院選での自民党大惨敗、与野党逆転にあります。そこで自民党では海部内閣が発足し、幹事長に小沢一郎が就任しますが、ここから本格的なマルハム取り込みにかかり、例のPKO法案が、これまた「反戦平和」を唱えていた大センセイの寝返りを契機とする「自・公・民」で成立します。
ここで繋がった小沢一郎(&平野貞夫)と大センセイの腐れ縁が、その後の細川連立非自民政権の成立を経て出てくる「新進党路線」という形で実現するわけです。
それと、もう一つ言えば、93年7月の総選挙で日本新党が大躍進し、細川非自民連立政権の原動力となりましたが、そのきっかけになったのは、その前年の92年夏の参院選で、日本新党が比例区で361万票を獲得して4議席を確保した実績があったからです。それは、まさに大センセイが参院での足場固めを終えて、満を持してマルハムを結成して、衆院に打って出たのと、まったく同じなのです。
つまり、参院を制することは、権力を奪取する「第一歩」でもあると同時に、「すべて」なのです(ですから、大センセイは国政選挙の中でも、参院比例でどれだけの票を全国ではじき出せるかに、最も心血を注いでおられ、例の「1000万票を取れ」というアジにつながっているのです)。
それゆえ、ここにアクセスした超ヒマな皆さんは、ゼッタイに参院を軽視してはなりません。
そこで、今度の参院選の有権者の投票行動の予測を私なりにこれからしてみたいと思います。
この原稿を書いているのが、公示翌日のセンキョ序盤戦ですので、これから7月11日の投票日まで、まだ、ひと波瀾、ふた波瀾はあると思いますが、これはあくまで現段階における私の見方であることを、まず、最初にお断りしておきます。
んで、昨日のニュース23に出ていた矢野絢也が、「今度の選挙にネーミングをつけるとしたなら、何にしますか?」という筑紫哲也の質問に、「けじめ選挙」と答えていました。やっぱり、最近の矢野絢也は冴えているというか、いい表現をしていました(#でも、こういう発言をすると、寝ている浮動票層にシゲキを与えて、投票所に足を向かせること、つまり、投票率のアップにつながるんで、回り回っていうと、じつは大センセイに逆らってることになるんやけどな)。
そこで、ほぼ矢野絢也の「けじめ選挙」と同じですが、私は、もう少し、年金の割りを食う20代、30代の若者世代にもウケやすいように、「リセット選挙」とネーミングしたいと思います。
年金不信をはじめとして、イラク自衛隊派兵(+多国籍軍への参加)、憲法改悪……。まあ、私は自・自・公路線の成立した当初から、こうした絶対多数を確保した与党の大暴走に「ノン」と吠えてきましたが、なかなか、日和見の大衆が動いてくれませんでした。そして、その間、小泉純一郎なる「トリック・スター」に大衆もまんまと騙されて(もちろん、ウラで糸を引いているのは大センセイですが)、気がついてみると、本当にトンデモないところまで日本は辿りついてしまっていました。
でも、まあ、大センセイの強い意向で、あの年金政局でマルハム&自眠党が暴走し、例の年金改悪法を強行突破してくれたおかげで、だいぶ、寝てた無党派層(浮動票)も目を醒ましてくれたところはあります。その意味では、私は大センセイに感謝しているくらいです。
そこで、笑ったのは、公示後に貼り替えられたマルハムの選挙用ポスターです。
ポスターに踊っていた文字は、ぬあんと、「実現力!! マニフェスト99%実行中」です。
「えー、冗談だろ」と私は思いました。「年金」の「ね」の字が、どこを探しても出てこないのです。だって、昨年秋の衆院選では、例の「100年先までの安心」をキャッチコピーに、年金問題を政治争点化して一点突破を図ったわかりやすさ、明快さがどこにもないのです。
確かに「後出しジャンケン」をしまくった後ろめたさがあるにしても、「私たちが取り組んでいた年金問題が不十分であることは確かに認めます。それゆえ、今度の選挙で有権者の皆さんの真摯な声に耳を傾け、もっといい年金改革のプランをこれからも進めていきますので、ご支持をお願いします」なら、まだ、話はわかります。
ところが、先日の日本記者クラブでの党首討論でも、「未納はイカンザキ君」が「年金法案は私たちがリードしたのではなくて、与党全体で取り組んできたものです」と言い放っていたのには、本当に私も腰を抜かしそうになりました。
で、このマルハムの一連の対応を見て、私は池田大センセイの「年金未払いギワク」が、間違いなく「真実」であると確信するに至りました。
つまり、この年金改革が政治問題化している限り、この大センセイの「年金未払いギワク」について、国怪審議と絡めて野党が突いてくる可能性があります。民主党がその気になれば、この秋の臨時国怪で「池田大作年金未払い問題徹底追及プロジェクトチーム」を立ち上げ、共産、社民も抱き込んで一致結束して追及することができます(#その場合、プロジェクトチームの座長は菅直人だな)。
しかし、国怪証人喚問とか、裁判所への証言出廷をなぜかイヤがるという“公所恐怖症”であられる大センセイ的には、これだけは絶対に避けなければなりません。であるなら、もう、「この年金問題は終わった」ということにするしかないのでしょう。
まあ、人ごとながら、F票取りにいま、全国をはいずり回っている創価学会の活動家の方々は大変だと思います。
で、本当に外部の支持を得て、票を積み上げたいのであれば、もちろんヤラセでいいですが(笑)、「次期代表の座」も睨んで、そろそろ太田昭宏あたりに公の場(選挙演説でもOK)で「神崎批判」をやらせてもいいのではないかという気がします。
つまり、ここは「大センセイ」を何としてでもお守りするため、今度の一連の年金法案は「神崎、冬柴ら党執行部が勝手に暴走してしまった」という“アリバイ”をせめて出しておかないと(笑)、この年金問題に何も触れずに素通りするのは、いくらなんでも無茶です。んで、まあ、それくらいのことしないと、いまの有権者の「年金不信」に応えることはできないというのが、私の率直な感想です。
まあ、マルハムのことはともかく、話を戻すと、今度の参院選はやはり「リセット選挙」だと思います。
「世直し一揆」ではありませんが、ここで一度、「リセットボタン」を押して、ひとつ、チャラにしてしまって仕切り直しをしようや、といったところでしょうか。その意味では、まさに国怪政局のツボである「参院」は、まさにリセットボタンであると、私は思います。
さて、そこで、だいぶ風は野党第1党の民主に吹きはじめてはいますが、しかし、まだまだ今の段階では弱いですね。
確かに、「ウソツキ自・公はうんざりだ」という有権者のムードは高まってきますが、それを受け入れるだけの勢いというか、やる気がまだ民主党には見えてこない。
ちなみに、「私」はといえば、今回の参院選に「野党」に投票することは確定していますが、「では、どこの党のどの候補者に」ということになると、まだ、「態度未定」です。
というのは、私の場合はなによりもまず「自・公を負けさせる」というのが第一にあります。
んで、いま、住んでいるのが神奈川県内ですので、地方区は神奈川県になりますが、ここはいま、現職が民主2人(浅尾慶一郎、千葉景子)、共産1人(畑野君枝)の「野党独占区」なのです。そこに、自民党新人の小泉昭男が挑むという、事実上、この4人の争いになっています。
というわけですから、投票日を迎える最後の週の火曜日か水曜日に、新聞各紙の世論調査の詳報が地方版に載りますから、それを見て、自民党の小泉を絶対に落とすために、野党の浅尾、千葉、畑野のうち、いちばん当落が厳しい候補に票を入れようかと思っています。
ただ、民主の代表が菅直人から岡田克也に代わってから、信濃町批判をまったくしていないことにハラが立っていますので、たぶん、いずれにしても共産は苦戦しそうだから、まあ、今回は共産党の畑野に入れるか、というカンジですかね。「棄権するくらいなら、まだ、共産党に入れた方がマシ」ですので(笑)。
んで、比例はまだ、まったく未定です。
ここは、衆院と同じ「1人2票」の持ち味を生かして、選挙区とは別にしようかなあと思っています。特に、中村敦夫の「みどりの会議」は何とか議席を確保してもらいたい思いがありますが、しかし、その一方で死票になるのは避けたいというジレンマもあって、本当に悩んでいます。
相変わらず、民主党がダメなのは、ほんと「なりふり構わず」が相変わらずなくて、このごに及んで、「田中真紀子に小泉批判をお願いする」という話が出ている時点で、「あー、終わってるなー」という気がします。
特に移り気な無党派層の目を引くには(この先、サマワで“死者”でも出ない限り)、ほんと「なりふり構わぬ」部分がないとでしょう。おねえちゃんを口説くにも、死ぬ気で真剣に口説いてこそ、向こうは振り向くわけですから、それがいまの民主にないってのは、ほんと致命的ですね。
まあ、そのへんは例の「年金財源一元化」を盛り込んだ3党合意にも滲み出ていますが、私に言わせれば、真の「対案」とは、「年金財源は“政教分離違反税”をもって充てます」ということをハッキリと選挙公約にすることです。
小泉自民党はもちろんですが、大作公明党もガンガン叩いてこそ、「おうー、民主党は本気で政権を取る気があるんだなー」ということが、有権者には伝わってくるのです。
とりわけ、マルハムの獲得議席を「比例は700万票以下、選挙区は公明候補3人全員落選で、6議席以下に落とす」ぐらいの目標を掲げて、とりわけ、東京、埼玉という選挙区で候補者を立てている首都圏では、「エース・菅直人」を投入して、ガンガン年金批判、政教一致批判をやるぐらいのことをしないと、私は今回は民主党には投票しません。
確かに、今度の選挙では風が野党に吹きはじめてはいますが、でも、この調子では現時点では、「大作&小泉」が逃げきる可能性が高いと思います。
やはり、「棄権するぐらいなら共産党入れる方がマシ」と、ここに共産党が存在してくれる有り難みを私は感じますが、まだ、投票まで時間はたっぷりありますので、岡田克也以下、民主党執行部が、今後、どういう対応を取るか“お手並み拝見”といきたいと思います。
(#ま、志位サンも相変わらずアタマが古いっていうか、りそなやふそう三菱トラックのように、この大企業がガンガン潰れようとしとる時代に、ナントカの一つ覚えみたいに「大企業の課税強化」を言っとるけど、ちゃうやろ。「『勝ち組企業』から税金をシコタマふんだぐる」やろが。さらには「宗教法人という“聖域”にもちゃんと課税します」って言わんとな)
ちなみに、今年の3月28日にフランスで統一地方選があり、与党の保守連合が惨敗し、野党の左派(社会、共産)が圧勝する結果(得票率左派50・15%、与党37・07%)という結果になりました。
もちろん、この直前にスペイン総選挙でサパテロ率いる左派社会労働党の圧勝の余波があったとはいえ、じつはフランスでも「年金問題」が最大の争点でした。
んで、極東亡国とまったく同様、「年金の支給切下げ」を強引にやろうとしたラファラン首相に、国民が怒りまくり、投票率が65%に達して、雪崩を打つように野党の左派に票が集中したのです。
もちろん、地方選ですから、ただちに国政にダイレクトに影響することはありませんが、この背景には、02年の大統領、国民議会ダブル選で圧勝した保守が、その圧倒的多数を背景にこうした年金改悪を強行しようとした与党(とりわけ、そのターゲットになったのが、「フランスの竹下登」ともいわれる風采の上がらないラファランでしたが)に「お灸をすえる」ため、国民が一挙に投票所に向かったのです。
で、知り合いのフランス人はこう言ってました。
「申し訳ないけど、野党の社共が、今後、政権に戻ったとしても、何の期待もしていない。というより、何もしてくれなくていい(笑)。とにかく、あのラファランを首相から引きずり下ろしてくれるだけで、それで十分」
とりわけ、ラファランが首相になるまで県知事をしていたポワトウ・シャラント県では、何と左派の得票率が55・10%まで伸び、ラファランは大恥をかくことになりました。
この結果にビックリしたのが、02年のダブル選で惨敗し、脳死寸前に陥っていた社会党で、今回の圧勝を機に、次の大統領選では書記長・オランドに当選の芽が出てきた
からです。まさに、フランスの統一地方選は今度の「日本の参院選」に相当しているわけです。
そこで本題からはズレますが、もう少し、「フランス政局」の話をしますと、敢えてシラクは今回、ラファランを更迭せずに、留任させました。
というのは、フランスでは「大統領は外交・防衛、首相は内政」と棲み分けがはっきりしているため、年金問題といった内政のツケはすべて首相が尻ぬぐいすることになります。
フランスの大統領選は07年ですが、シラクのオッサンはまだ、全然、枯れていないというか、「3選」に向けて虎視眈々を狙っているのが、これでわかります。
というのは、シラクはミッテランのコアビタシオン(保革共存)下で、首相をやっていたとき、「大統領的首相」を目指して、サミットにも一緒に出たりして、要は「目立つ」ことをハデにやっていました。
ところが、88年の大統領選では、その内政をツケを全部、シラクは負ってしまいました。
というのは、「ウルトラ・リベラリズム」を標榜していたシラクは、左派のミッテランが導入した「富裕税」と「解雇許可制」を廃止し、社会保障や最低賃金の見直しというところに手を突っ込んだため、国民の大反発を買い、そうした同情票を味方につける形で、ミッテランはシラクを破り、大統領再選を果たすことになるのです。
シラクはこの時の“痛み”がありますので、内政については、ラファランをリモート・コントロールする一方、そのツケは全部、ラファランに負わせて、本人は悠然と「アメリカに楯突くゴーリスト」を演じていればいいわけです。それゆえ、いま、巷で言われているのが、「シラクは恐らく、ラファランを雑巾がボロボロになるまで使い切るだろう」ということです(笑)。
んで、次の大統領選は、本心では「3選」を狙っているシラクに(とはいえ、フランス国民世論は「さすがにそれはカンベンしてくれ」というムードですが)、ガンガンとシラクに噛みついてる財務相・サルゴジ、さらに、この統一地方選で息を吹き返した社会党のオランドあたりが下馬評にあがっていますが、たぶん、「保守政権も飽きた」ということで、オランドがサクッと大統領になってしまうような気もしますが。
そこで、フランス人は投票行動でよくやるのが、「与党状態が長く続くと、澱んでくるんで、空気を入れ換えるために、必ず野党に投票する」ということで、これを「サラダ・ボールの法則」と呼んでいます。つまり、「政権を変え、人心を一新することに、大きな意味がある」ということです。
これが昔なら、百姓が鋤や鍬を持って立ち上がり、代官を襲撃するといったような、「武力」に訴える方法しかありませんが、現在では、幸いなことに、ちゃんと「選挙」という民主的な手段が確保されています。
「どうせ、投票に行ったところで何も変わらないので、棄権することが良識の証」などとほざくのは、単なるニヒリズムです。そうなったとき、いちばん、メリットを被るのが、わが国最大のカルト政党です。
まさにこの国の「99年体制」とは、主権者の無知、無関心の間隙を突く形で、一連の
低投票率センキョの中、政権中枢をサクッと乗っ取った“池のクイ”が咲かせた、世紀
末の徒花ともいえましょう。ですから、ここは、奢りきった政権与党(=大作&小泉)にきつくお灸をすえることにこそ、大きな意味があるのです。
そのためには、少しはモノを考えている無党派層がここで立ち上がり、「野党」に投票することです。現代の「票一揆」こそが、まさに参院選という、今度の「夏祭り」なのです。
ここで投票率が60%を越えたら、自・公敗北、んで、まかり間違って、今春のフランスの統一地方選並みに、投票率が65%に達したら、それはもう「革命」です。
さあ、このサイトにアクセスしているような超ヒマな皆さん、7月11日には投票所に必ず行って、野党に投票しましょう! 合言葉は「もう、ウソツキ大作&小泉政権はウンザリだ。政権の座から引きずり下ろそう」です。
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