「ゴーリズム」とは何か(承前) |
#で、シラクは戦時中の「ユダヤ人迫害」について、大統領就任後に、公式にその非を認めて謝罪しとるんだよな(ちなみに、ホロコーストの犠牲者の遺族がパポンを初めて告訴したのが、ミッテランが初当選した81年の12月やったが、ミッテラン時代はずうーと店晒しにされていて、パポンがその「人道に反する罪」で起訴され、ボルドーのジロンド県重罪裁判所で初公判を迎えたのが、シラク時代の97年10月8日や。それから10年、今となっては、みんな忘れてしもうておるようやし、オルメルトも、こんなこと知らんやろ)。その意味でも、シラクは筋金入りの「真正ゴーリスト」ではあるんだが、フランスも同様だろうが、猿やセゴレーヌのような「戦後生まれ」は、そうした「歴史の真実」を「生きた体験」として知っておらんから、口先だけのキレイゴトで有権者をいくらでも篭絡できるんだよな。まあ、それに対して、異議を唱えるのが、歴史家であり、ジャーナリストの役割だが、あの国も日本と同様、「御用ガクシャ」が掃いて捨てるほどおるから、国民の間にそうした問題意識というか、危機感がなくなってきてるんだよな。だから、「日本のゴーリスト」がこうやって吠えておるわけや(笑)
#それと、アルジェリアが最近、旧仏植民地時代の核実験場を公開しとるんやな。今でも現場からは高濃度の放射能が検出されるということだが、これは案外、イランに対するメッセージになるような気がする。というのは、アルジェリアはイスラム原理主義勢力が強いとこやから、一般には「イスラム原理主義=狂信=核保有」というレッテルを(アメリカによって)貼られてしまっているが、アルジェリアはこのように日本と同様、「核放射能の被害を受けた痛みと苦しみ」を蒙っているわけだから、国是として「核保有」という選択肢は取りえないと思う。イスラム急進派の国にもこういうところがあるという事実は大事だと思うが。もっと言えば、ドゴールはパリ陥落後、ロンドンを経て、仏領アルジェからレジスタンスを立て直し、フランス解放へと導いたこともあって、アルジェリアとは切っても切れない関係にある。アルジェリアの独立問題で、共和国崩壊の危機に瀕したとき、ドゴールが再登場したのも(というより、あの局面を打開できるのはドゴールしかいなかった)、そこに「地縁」があったからだな。米ソに対抗すべく(特に対アメリカを意識して)、ドゴールは「核保有」に踏み切ったわけだが、その背後でこうしたアルジェリアや海内領土であるムルロア環礁などの多大なる犠牲と痛みが伴っていることを、決して忘れてはならないと思う(ただ、フランスは95年のムルロア環礁を最後に、その後は核実験を行っていない)。特に「ゴーリズムにおける核保有」というのは、いわば「伝家の宝刀」の最たるもので、刀を抜いたらそこでオシマイなんであって、そこを踏まえつつ、「核拡散の防止」、さらには「核兵器の廃絶」という方向に持っていかなければならないと思う。だから、IAEAはちゃんと仕事をしろ。
#おーっ、2月28日付けのカナール・アンシェネが、ついに猿の「超高級マンション転がし、濡れ手に粟のつかみ金ゲット疑惑」をスッパ抜いたか。ワシが「猿の地元、ヌイイを徹底的に調べろ」と言っておったが、思った通りやないか(笑)。で、猿がヌイイの高級住宅(7部屋、233平方メートル)を購入したのが97年だが、その購入価格が相場より少なくとも30万ユーロ(約4800万円)も安い約87万6000ユーロ(約1億4000万円)で、改修費は業者が負担か。猿はヌイイの市長が長いんで、業者は市と取引があるんだな。「まさか」でのうて、「やっぱり」や。しかし、事件に強い腕利きのブンヤは日本もフランスも同じだな。
猿がその超高級住宅を転売したのが、ぬあんと去年の06年で転売価格が倍以上の194万ユーロ(約3億1040万円)か。じゃ、〆て猿が手にしたつかみ金は106万4000ユーロ(約1億7040万円)ということになるんだな。どうせ、こんなもん市街地の再開発区域にでも差し掛かってるんだろ。っていうより、自分で買うた住宅の周辺を、自分が市長なんやから、そこを再開発すればいいだけの話ぢゃないか。これ致命的なのは、売却益を手にしたのが去年(06年)ってことやな。というのは、猿は犯罪を取り締まる警察組織の最高責任者である内務大臣であるにもかかわらず、自らの手でそういう“犯罪行為”に手を染めていたってことや。こんな人間に「共和国大統領」を任せられるわけがないじゃないか。シラク、いよいよこれで「3選出馬」が決まったようだな。そもそも、それ以前の「政治的責任のけじめ」として、内務大臣をさっさと更迭しなくちゃじゃないか。シラク、早くドビルパンに命じて、猿の辞表を持って来させろ。っていうか、さっさとクビにしろ!
#ん、何や猿、そのカナール・アンシェネの発売日に突然、記者会見し、これまでのスタンスを180度引っくり返して、「米国の過ちを修正する」「イラク戦争は歴史的な過ちだった」とは(笑)。そんな口先で言ってることをコロコロ変えとる前に、はよ、内務大臣の辞表をドビルパンのところに持ってこいや。ドゴール憲法の規定やと、確か、首相の任命権は大統領にあるが、閣僚は首相が任命することになっとると思うから、辞表を出す先の宛名はシラクでのうて、ドビルパンでええんやな。
#んー、3月3日発売の週刊誌フィガロ・マガジンの世論調査で、ついにバイルが、猿、セゴレーヌを抜いて、人気度第1位に踊り出たか。猿、セゴレーヌの両方から票を食ってるんだろうな。UDFっていうのは、もともとカネを持ってる保守層や上流貴族の末裔みたいなところが地盤の、要は「ジロンド派」なんだよな。確かにUDFの政治家っていうのは、創立者のジスカールデスタンに象徴されるように、バイルもしかり、派手なパフォーマンスはないけれども、堅実に仕事はきっちりやるという安定感があるんだよな。UDFはまさに中道だから、政策的にはUMPともPSともくっつくことができるしな。シラク、それではここで「3選後」の組閣人事を一緒に考えるとするか。首相は大統領に任命権があるんだから、首相はバイルで決まりだな。で、UDFを軸に、PSかUMPのどっちと連立を組むかはブルボン宮に丸投げして、とりあえず、「外交・防衛」は大統領の専権事項なんで、「閣僚の大統領枠」ってことで、「外相・ドビルパン、国防相・ドストブラジ」で、イランや国連に遊びに行ってくる、と。んで、あと、もう1つ環境相にボべを入閣させることだけ話をつける。あとは、なるべく、「若手」を登用するよう言っておけば十分ぢゃないかなあ。まあ、ひょっとしたら、ボべは最初は刑務所が大臣室になるかもしれんが、決裁書類にサインするだけだったら、どこでもいいぢゃないか(笑)。それで、もし、仕事に支障が出るようであれば、恩赦すればいいだけの話やしな。しかし、刑務所に放り込まれた人間が、政権中枢に入り込むなんて、まさに「フランス革命」やないか!
#あの中南米のチャべス旋風に象徴されるように、今、内政の最大関心事はグローバル的にも「格差是正」やからな。右派の猿が、このごに及んで新自由主義に走るのは、まだわかるにしても、左派のセゴレーヌがぬあんで、猿の後追いをせなアカンのや。オンナだからって、それだけの理由で持ち上げたらアカンってことや。バイル躍進の見立ては、今朝(3月20日)の朝日が書いていた内容とワシもほぼ同じ意見だが、もう一つ付け加えると、スペイン国境のピレネー山村の農家出身といるバイルは、ボルドー第三大学卒で、猿と同様「非ENA」なんだよな。パリ生まれのシラクは、とてもENA出身には見えないが、シラク家は、かつて、ジャコバン派なんかがイッパイ出たマシフ・サントラル(中央山塊地帯)に近いコレーズ県の出で、シラクは35歳で下院議員に初当選したとき、じつはこの父祖のルーツであるコレーズ県から出てるんだよな。その点、猿は「ハンガリー移民の子孫」とは言っているが、じつは「ハンガリー貴族の末裔」で、ぬあんと、実家があのパリの16区にあるんや。そんな金持ちのボンボンや、ENAで机上の空論ばっか繰り返して、キレイゴトしか言わないような連中に、下層に追いやられていった人間の心のひだがわかるかっていうんだ。バイルに対する支持は、そういう「アンチENA]「反ニューリッチ」に対する「ノン」の声なき声も入っているような気がする。
#しかし、猿はそのヌイイの高級住宅転売によってゲットした106・4万ユーロ(日本円換算1億7040万円)ものつかみ金をいったい何に使ってるのかな。しかし、手口としては地上げによって不動産を転がして「不労所得」を得ていた、日本の田中角栄とクリソツやな(笑)。まあ、「使途」として考えられるのは、一つは「私的流用」やが、もう一つは今度の大統領選のセンキョ資金に充てている可能性やな。センキョ運動にかかるオモテの経費は、おそらく党の正規の予算から支出したカネを充ててるだろうが、UMP内のシラク派の閣僚や議員を切り崩して寝返らすのには、こうした「裏金」を充てるしかないからな。まあ、ワシが猿の立場やったら、ドビルパンやアリヨマリにウラからこっそりカネを渡して、「どうせ、シラクも辞めることやし、ワシの味方になれ」って、ゼッタイに言うからな(笑)。しかし、セゴレーヌはホンマ、アホやな。猿のこのモンダイを突かなかったら、他に何を攻撃するってんだ? やっぱ、本気でエリゼ宮に入りたいとは思ってないんやろうかな。
#今日(4月8日)の朝日朝刊が、仏・ナント郊外のモンフォールにおけるマリ人労働者排斥の記事を掲載しておったが、地元で移民擁護の運動に携わっている中心人物のコメントを引用するまでもなく、こんなもん猿の指示に決まってる(笑)。「滞在許可書」がないとの理由で、地元警察が豚肉精肉工場で働く労働者27人を突然、一斉に検挙したのが、今年の2月28日だろ。カナール・アンシェネが、例の猿のヌイイ高級住宅の売り抜けギワクをスッパ抜いた日ぢゃないか。しかし、猿が公認しとるUMPの前身はRPRだろ。「名は体を顕わす」というのであれば、「異質な文化や価値観に寛容である」との、「フランス共和国」の精神を最大限尊重するなんて、アタリマエじゃないか。FNが移民排斥を主張するのは、まだわかるが、猿を公認したUMP、さらにはこうした本来、最も重視しなければならない「マイノリティ」に対する人権を重んじてきたPSまでもが、ダンマリを決め込んでいるのか。で、つい最近は「ユニヴァーサリズム」を唱えてきたドビルパンが猿の支持を表明したのはもとより、シラクまでもが猿を「後継指名」だから、もう、終わってんだよなあ。
#今度の大統領選においては、ある意味、「対立軸」とういか、「争点」はハッキリしてんだよな。それは内政における「格差是正」ということで、それは勿論、「猿VSセゴレーヌ」ではなく、「猿VSバイル」だ。本来、「左」であるセゴレーヌが言うべき主張を、バイルが代弁する形になってしまっている。しかし、富の偏在を解消する「格差の是正」は、パンテオンで眠っているルソーがそもそも「人間不平等起原論」で言ってることだから、じつは「右」も「左」もあまりというか、ほとんど関係ない。セゴレーヌはダンナのオランドから猿に浮気して(その意味では、オランドはまさしくコキュやな)、「新自由主義経済推進・治安維持強化路線」に舵を切ったところ、バイルが本来の左派が重視していたマトモな部分を引っ張り込んでしまったため、セゴレーヌが慌てて軌道修正を図ってしもうたんやが、遅いな。「自分」がないんだ。もう、外交については、誰がなっても、「イラクからの米軍撤退」「中東和平の実現」という流れはできてきているからな。ワシは猿のロコツな「弱肉強食路線」には反対だが、まだ、猿の方が主張としては一貫している部分があると思う<とはいっても、猿はドビルパンが導入しようとしてたCPE法案を潰しとるから、セゴレーヌと同じか(笑)
#仏大統領選、第1回の得票率(最終確定)が、猿31・18%、セゴレーヌ25・87%、バイル18・57%、ルペン10・44%か。で、その他左派系(共産党・極左トロツキスト政党etc)が11%、その他右派系が2%で、最終的な投票率は8割を超えて(最終確定83・77%)、第5共和制では過去最高になるかもしれんのか。いやー、この盛り上がりはスゴイな。北朝鮮ならともかく、民主主義の体制を敷いている国で投票率が80%を超えるなんて、信じられんな。バイルは大健闘だ。よくやった。この春先までは「泡沫候補」の扱いだったからな。前回(02年)は1回目で、シラクが19%、ルペンが16%で決選投票になっとるから、UMP、PSという「2大政党」の間にあって、もの凄い存在感を示した。既成政治に飽きたり、見切りをつけた層を、まっとうな主張と、やる気全快オーラで、ちゃんと吸収したということや。むしろ、バイルは「次」につながったと思う。ルペンの得票率は予想通りだな。事前の世論調査の数字は少し(というか、かなり)高すぎると思ってたからな。しかし、これでバイルは「キャスティング・ボート」を握ったな(笑)。「最大争点」も「格差是正=雇用モンダイ」で見えてきたしな。単純計算でも「猿+ルペン+その他右派」=44%、「セゴレーヌ+バイル+その他左派系」=56%で、全然、大逆転ぢゃないか! ぬあんと、おととし(05年) のEU憲法草案批准の国民投票とピッタシ同じやないか!
#結論から先に言おう。今度の「2回目投票」は、バイルが完全にキャスティング・ボートを握った。今日(4月24日)の朝刊できちんと書き込んでいたのは朝日だけだったが、共産党、緑の党など「その他左派」(=計11%)がこぞって、「セゴレーヌ支持」を表明した意味は極めて大きい。だから、今回はバイルが「セゴレーヌ支持」を表明した時点で、帰趨が決まる。「TSS」(=TOUT SANS SALCOZY、猿以外なら何でもOK)の「反猿キャンペーン」に相当、火が付いてきておるから、この勢いが2回目の投票日に向け、盛り上がることはあっても、下がることはない。今回、バイルの得票率は19%だが、このうちのわずか14%がセゴレーヌに投票すれば、猿に勝つわけだ。猿的には今回のバイル票の「3分の1以上」を切り崩さなければならないわけだが、しかし、それはカネで切り崩せる数字ではない。もちろん、人間にとって、カネも大事だが、カネより大事なものもある。それが問われるのが、おそらく、今度の大統領選だろう。そもそも、UDF自体、UMPに切り崩されて、組織の体をなしておらんし(だいたい党の創立者であるジスカールデスタンが、猿支持を表明しとるくらいだからな)、実質的には今度の選挙戦を通じて、「バイル新党化」したとみていいだろう。それに、今度の選挙中、バイルの言動ははっきり言ってセゴレーヌの「左」を行っており、従来のPS支持層がバイルに流れた格好だ。その主張の明快さとラディカルさを支持して投票した有権者は多い(というか、ほとんどだろう)し、その多くがいわゆる浮動票だろう。だから、バイルが「セゴレーヌ支持」をビシッと表明し、その旨、いちおうUDFの党としての正式な機関決定(=党議拘束)をかければ、今回はそんなに多くはなかったであろう、UDFの組織票も含め、そのバイル票の大部分がセゴに回るから、多少のおこぼれが出たところで、「セゴレーヌ当選」は、5月2日のテレビ討論で、彼女がよっぽどの大墓穴を掘らない限り、動かしがたい。でも、間違いなく、猿はウラでUDFの組織票の切り崩しにかかるで(笑)。どちらかというと、UDF自体はこれまで、PSよりRPRとの関係が全然、近かったからな。そこらあたりの人脈から「カネとポスト」で1本釣りを図るだろう。フランス社会ってのは、思ってる以上に「ソシアル」やで。むしろ、バイルは6月の下院選に向け、5月中の臨時党大会開催、場合によってはUDFからの党名変更(=バイル新党旗揚げ)も視野に入れ、準備を進めるべきだろう。「共和国防衛」の鍵は、今やバイルが握っておる(笑)。センキョとは、「武器を持たない戦争」である。今や、フランスは内戦(=guerre civile)状態に突入した。心ある者はすべからく立ち上がり、コトバを武器に戦闘に参加せよ! 理想を追い求め、死地へ自らを追い込む行為の中にしか、「未来」は存在しないであろう。
#結局、決選投票は、投票率83・97%で、猿53・06%、セゴレーヌ46・94%で、猿の当選か。猿の勝因は、これはもう、バイル票(=旧UDF票)を切り崩したことに尽きる。1回目でバイルの得票率は19%だったから、ざっとその半分が猿に流れてしまったことになるな。これは今となってはせんのないことだが、4月25日にバイルが「セゴレーヌ支持」を正式に打ち出して、党議拘束をかけていれば、流れは完全に逆転し、「2位・3位連合」でセゴレーヌが勝っていたのは間違いない。1回目の投票結果を積算してもわかる通り、UMPにFNなどの極右系を足しても絶対に「50%超」にはならんからな。こういう「生き物」はタイミングがすべてだ。例の「UDFから出る選挙区に、すべてUMPの候補者を立てる」の猿の脅しが効いたな(笑)
#セゴレーヌ、前半戦(=大統領選)は終わったが、「時間差ダブル」の後半戦(=下院選)がすぐ6月にあるからな。だいたい、オマエは、最初、猿に浮気してしまって、本来、左派がやるべき「ソシアル路線」を打ち出すのが遅過ぎたんや。オランドは怒ってるで(笑)。この春にバイルが「超左傾化」して、旋風を巻き起こしてからぢゃないか。ぬあんで、最初からブレずにその路線を貫かなかったんや。だから、下院選でUMPを過半数割れに追い込み、PSが過半数を取ればマテニョンを取れるからな。最後に対立軸はハッキリと見えてきたんで、フランスの有権者も案外、バランス感覚があるんで、さらに猿の「毒抜き」をすべく、敢えて「コアビタシオン」を選択する余地は、全然アリだと思う。これまでの下院選を見ると、81年のミッテラン初当選の際は、保守が多数だったことから、「コアビタシオン阻止」のため、就任直後に、抜き打ち的に解散に踏み切ったものだし、前回02年は大統領任期短縮に伴う初の「時間差ダブル」だったが、シラクが対ルペン圧勝を受け、RPRがUDFの一部を抱き込んでの新党(=UMP)による勝利だったから、全然、局面が違う。最低でも比較第1党に踊り出て、「2回目」で共闘した左派勢力とちゃんと選挙協力すれば、これは下(=国民議会)からの「逆コアビタシオン」が実現するぢゃないか!
#で、何で今回、バイル票がサクサクと猿に切り崩されてしまったのかを考えたとき、たぶん、シラク支持層もだいぶバイルに投じていたからだという気がする。バイルは前回の約3倍を獲得したわけだが、旧UDFの組織票自体はそんなにはなかったと思う(そもそも、その多くがUMPに合流していたので)。で、バイルはセゴレーヌの「左」を行っていたので、本来のPS左派の支持層に加えて、「反猿」としての保守層内部の「シラク票」もだいぶバイルが掠め取っていたように思う。だから、旧UDFの組織票に加えて、この「シラク票」は、猿が切り崩しやすいターゲットだったんだろうなあ。これは今だから言うが、ホンネではシラクに3選出馬して欲しかった。ルペンも出てたことやし。ただ、現実問題を見た場合、正直、シラクの「決選投票進出」は難しかったと思う。しかし、それでも10数%の得票率はあったと思う。ただ、そうなると、バイルとの票の食い合いとなり、春以降、勢いの出てきていたバイルの決選投票進出の芽がなくなってしまうのと、最後はドビルパンまでもが「猿支持」を表明し、厳しい状況となった中、出馬を促すのはおそらくフランス国内にはいなかったかもしれない。ベルナデッドも反対したのではないだろうか。しかし、ワシのホンネのホンネを敢えていうと、「敗北必至」でも出てもらいたかったという思いはある。その意味では、遠く地球の裏側で投票権はなかったが、自分の住んでいる国の選挙なんかよりも、「わが身のこと」のように感じた。いい思い出になった。たぶん、このことはずっと忘れないだろう。
#しかし、新大統領が決まった日の晩に、「パリが燃えている」なんてアリか? おととし秋は郊外のシテだったが、今回はパリ市内、それも大革命の発火点となった「バスチーユ広場」だろ。たぶん、セゴレーヌ、バイルではありえなかったはずだ。確かにあの若者たちの暴力的な手段による訴えかけは問題はあるけれども、でも、インテリ連中のように、大衆に訴えかけるコトバを持ち得ないから、社会から疎外されている彼らは、ああいう方法に出てしまっているわけだよな。そこの部分をきちんと捉えないだよな。ワシももう少し目をちゃんと凝らして、こうした現象の「底流」にあるものをきちんと見据えていかないとだ。足元をすくわれた思いがする。
#しかし、シラクは確かに「3選不出馬」は表明したが、「政界を引退する」とはちゃんと言ったんか? ワシもホンマにしつこいが、6月の下院選にコレーズ県から、無所属、もしくはバイル新党から出たらどうや。今、まだ、74歳だから1期5年くらいは十分に務まるはずだ。ジスカールデスタンもミッテランに負けた後もかなり長い間、議員でおったし、やっぱり猿に対する「重し」は必要だろうなあ。セゴレーヌも選挙戦の最後の方になって、ようやく猿に噛み付くようになったが、まだまだ「迫力不足」だしな。テレビ討論では少し空回りしとったという感じだったし。あの若者暴動を見ていると、とてもUMPが圧勝するとは思えん。猿は勝ったとはいえ、「バイル票」を切り崩して、何とかやっとこさ、エリゼ宮をもぎ取ったに過ぎないわけだろ。とりあえず、猿がシラクの任期の切れる5月16日に新首相を任命するようだが、どうせ「選挙管理内閣」やし、UMPが過半数割れすれば、パリはまた、「大政局」になる。前回02年は、PSはジョスパンが決選投票に行けなかったのに対し、今回はセゴレーヌが猿と直接対決しとるわけやから、その延長戦上で、まさに「第2ランド」のゴングや(笑)。おそらく、UMPもPSも単独過半数は難しいだろう。PSが「第2回」で共闘した「左派連合」でちゃんと候補者調整をやって挑み(その場合、バイル新党の動向も鍵になる)、過半数を制すれば、猿もセゴレーヌかオランドにマティニョンに入るよう頭を下げなければならなくなるし、さらに、UMPも左派連合も過半数に達しないと、これはもっと混沌としてくるな。
#しかし、猿当選に伴う若者暴動、パリだけでのうて、フランス全土に飛び火しとるんやな。これは「2005年秋」の二の舞やな。要するに「不信任」を突き付けられたも同然じゃないか。こんなの「ありえない」。68年5月の、インテリ学生の「ままごと遊び」なんかとは、全然、レベルが違うで。「共和国大統領」の威厳も地に落ちたというのは当然だが、これは猿の責任というより、猿の当選を決めたバイルの責任は重大だな。バイル、ワシの目の前で腹を切れ! これはシラク、暢気に「ケ・ブランリー美術館名誉館長」として、非常勤の観光ガイドで遊んでる場合ではないな。ホンマ、冗談じゃないで。
で、その若者暴動は、5月6、7日の2日間で、パリ以外にもリヨン、マルセイユ、ボルドー、トールーズ、ナントにも広がって、身柄拘束されたのが計600人弱、けがをした警官が78人にも上っているのか。「全土に飛び火している」という表現は大げさでも何でもなく、中にはデモが暴徒化したところもあるのか。これは思っている以上に深刻だな。それで猿はマルタに雲隠れして、優雅にヨット遊び? バカじゃないのか。どうして猿は内務大臣の時みたいに、現場に足を運んで、そして、彼らと「対話」しようとしないんだ? 勝利宣言の場で「私は、全フランス国民の大統領である」と言ったんじゃなかったのか? 何か根本的におかしいな。本当に、これが「フランス」なのか?こんなんだと、アメリカのことをとやかく言える資格もないな。下院選では、PS以下、野党各党は、本格的に「猿不信任」を突きつけなければならないじゃないか。
#これはシラク、ホンマに下院選に出るべきだと思う。さっさとコレーズ県に選挙事務所をこしらえて、ドブ板始めた方がええで。だって、あの80前のルペンが選挙戦って、あれだけ吠えまくっておるんだから、できないわけがない。日本だって、田中角栄、中曽根とか、みんな総理大臣辞めた後でも、選挙には出ておったからな。「まだ体力、気力は十分にあるんで、残された時間は、まだ、一下院議員としてフランスのために尽くしたい」でイッパツや(笑)。UMP、PS、さらにはバイル新党が候補者を立てたところで、そんなのは、知ったことではない。コレーズ県は山間だから、回るはタイヘンだが、足腰の鍛錬にちょうどいいだろう。いや、ワシもボランティアでビラまきに行ったるで。フランス語もちゃんと喋れるから、応援演説もできるしな。
#シラク、パンテオンで眠っているルソーの革命思想の本質にあるものとは、人間の自然状態(=etat nature)を「善性」(=bonte)と捉えたことに尽きると思う。文明は人間を堕落させた。その最たるものが貨幣だと思う。しかし、「革命」とは、そうした堕落した(しそうになっている)人間ひとりひとりが、「自然状態」に何とかして、立ち返ろうする営みに他ならないと思っている。それゆえ、フランスの「共和国大統領」とは、その任期の最後の日まで、その革命思想を守る「最後の砦」であらねばならない。そして、その思想とは、一つの国や民族を超えて、人類にとっては永遠普遍なるものだと、ワシは信じている。だから、フランスは世界から信頼され、一目置かれる存在でなければならない。だから、「次」の大統領が誰であれ、この理念だけは絶対に守ることだけは継承してもらいたい。これが、日本にいる友人が最後に贈るメッセージだ。
━Seule resolution et action ferme mortelle peut changer, creer destin et l’histoire. Courage, Espoir, c’est moi. Volonte general, Revolution, c’est aussi moi. France, c’est apres tout toi et moi. Allez-y, vivre France!
